うちなーぐちは、標準語がなまったものではありません。日本語と同じ祖先から千年以上前に分かれた別系統のことばで、言語学では「琉球諸語」として扱われます。2009年にはユネスコが、国頭語・沖縄語・宮古語・八重山語・与那国語をそれぞれ消滅の危機にある言語として分類しました。
観光地で見かける「めんそーれ」はその入口にすぎません。ここでは日常で使われる言い回しを、場面ごとに整理します。
あいさつは男女で違う
まず覚えたいのが「はいさい」。ただしこれは男性が使うことばで、女性は「はいたい」と言います。時間帯を問わず使えるので、朝でも夜でもこれ一つで通じます。
- はいさい/はいたい … こんにちは(男性/女性)
- めんそーれ … いらっしゃいませ、ようこそ
- にふぇーでーびる … ありがとうございます
- ぐぶりーさびら … 失礼します
- ちゃーがんじゅー? … 元気にしてる?
- うさがみそーれ … 召し上がれ
改まった席では「ぐすーよー、ちゅーうがなびら(皆さま、本日はお目にかかります)」という口上が使われます。琉球芸能の舞台でよく耳にする言い回しです。
「ちむ」=心。感情はここから広がる
うちなーぐちで感情を表す言葉の多くは「ちむ」から始まります。「ちむ」は漢字で書くと「肝」。沖縄では心の在りかを肝と考えてきました。
- ちむどんどん … 胸が高鳴る、わくわくする
- ちむぐくる … 真心、思いやりの心
- ちむぐりさん … 気の毒だ、胸が痛む
- ちむじゅらさん … 心が美しい、心根がよい
「ちむぐりさん」は単に同情するのではなく、相手の痛みで自分の胸まで苦しくなる、という語感を持っています。ことばの成り立ちに、沖縄の人間関係の距離感があらわれています。
褒めるとき、味わうとき
- じょーとー … 上等、すばらしい
- まーさん … おいしい
- ちゅらかーぎー … 美人(ちゅら=美しい、かーぎー=顔かたち)
- でーじまーさん … すごくおいしい
「ちゅら」の語源は「清ら(きよら)」。見た目の整い方より、けがれのなさを指すことばです。美ら海水族館の「美ら」もこれです。
気持ちが高ぶったときの一言
- でーじ … とても、大変(「でーじなとーん」=大変なことになっている)
- あきさみよー … あらまあ! なんてこった!
- わじわじー … 腹が立つ、イライラする
- あがっ … 痛い!
人とのつながりを表すことば
沖縄の価値観がいちばん濃く出るのがこの分野です。
- いちゃりばちょーでー … 行き会えば兄弟。一度出会えば血縁がなくても兄弟同然
- ゆいまーる … 結(ゆい)+回る。労働力を順番に回し合う相互扶助
- なんくるないさ … 「まくとぅそーけー なんくるないさ」の後半。正しい行いをしていれば自然と良い方向へいく
「なんくるないさ」は「なんとかなるさ」と訳されがちですが、前半の「まくとぅそーけー(誠を尽くしていれば)」が本体です。やるべきことをやったうえで天に任せる、という覚悟のことばでした。
ことばは消えかけている
戦前の学校では方言を話した子どもに「方言札」を掛ける指導が行われ、戦後も標準語教育が進みました。現在、うちなーぐちを日常的に話すのは主に高齢層で、若い世代は語尾やイントネーションが残る「ウチナーヤマトゥグチ」を話します。9月18日は「しまくとぅばの日」として、県が継承の取り組みを続けています。
読んだあとは、クイズで確かめる
ここまでの内容がどれくらい頭に入ったか、4択クイズで試せます。1問ごとに解説が付くので、間違えてもその場で覚えられます。

